『未明の空、古い唄を口ずさむ』~本編後編からエクソドスまで |
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| 扉を開こうとする、幾重ねにも連なるその鍵を私たちは力ずくで破壊する。すこしもへこまない。 銃を持ってきた仲間が撃つ。扉にヒビが入った。 力任せに私たちはそばにある石や、木や、たくさんの重く堅いものをぶち当てていく。 何度も何度もくらわせると、扉の向こう___本当の外の世界___をさらけ出された。 「外へ、出るよ!」 かけ声。歓声とともに、外へと出て行く。
はじめてみた『本当の空』は、黒だった。 一面の黒に、細かく晃る小さな小さな宝石がちりばめられていた。 美しかった。 この外の世界には、空以外に綺麗なものはないけれど、 それでも世界は美しかった。この空が、この世界の天井にあるかぎり。
エクソドス『誰がために星に祈る』
空を見上げて星々に祈る。 歌いおえた私は、その『墓』に背を向けて歩き出した。 山の様に積まれたその『墓』は、『人形』の残りかすが積まれたものだった。 心臓を抜かれ、筋肉を抜かれ、血を抜かれ、目を抜かれ、 どうしようもなくスカスカになった屍骸を見るたびに、辛く苦しい思いが胸を巡る。
あのとき彼は、薄暗い『電球の世界』から、青に『塗られた空』へと出て、 それを空だと思いこんで死んでいった。 こんなにも美しい空を見上げることができなかった彼は、 『本当の空』を求めて今も彷徨っているのだろうか。
だけど、あの日の約束。 ぼくたち、いえ、私は必ず見つけるよ。 私たちが安心して住める、そんな場所を。 空を見上げるたびに、口ずさむ歌がある。 私は歌い続ける。それを鎮魂曲のように、追想曲のように、いつまでも彷徨い続けているだろう彼をおもって。
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6月17日(土)12:45 | トラックバック(0) | コメント(0) | Novel | 管理
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